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【大学1〜2年生向け】社会学の厳選入門書5選

はじめに

 ここでは、大学の教科書で用いられるレベルの社会学の教科書から新書、文庫までを読み漁った社会学徒が独断と偏見で、
・これから大学で社会学を勉強する高校生
・社会学の授業を受けてより関心を持った社会学以外を学ぶ大学生
・学び直しをしたい社会人
に向けて入門書を紹介します。

厳選入門書5選

1. 橋爪大三郎,大澤真幸『社会学講義』

 現代日本を代表する社会学者、橋爪大三郎先生と大澤真幸先生らによって書かれた社会学の入門書です。この本は、社会学を総括する議論だけでなく、連字符社会学と呼ばれる、理論社会学や家族社会学などの〇〇社会学についても説明がされている点が面白いです。
 社会学の成立以降、徐々に専門分化していき、現在ではかなりはっきりとした形で領域ごとに〇〇社会学として研究がされている中で、俯瞰して社会学総論、各領域社会学について知ることができる一冊です。 

2. 大澤真幸『社会学史』

 学部レベルの授業であれば教科書(或いは参考書)としても挙げられることのある一冊です。こちらも1と同様、大澤真幸先生によって書かれています。社会学は19世紀に確立されたとする考え方が中心ですが、実は、古代ギリシャにまで思想的には遡ることができ、そこから脈々と続けられてきた議論の上に社会学が立っていることを実感できます。また、時代ごとに出てくる社会学者が以前の社会学者とどのような繋がりを持っているのか、時代が社会学にどのように影響したのかが詳しく、丁寧に書かれており、単純に読み物としても面白い一冊です。

3. 古市憲寿『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』

 テレビのコメンテーターでもお馴染みの古市憲寿氏による著作ですが、単著ではなく、大澤真幸先生や小熊英二先生、上野千鶴子先生など名だたる日本の社会学者に「社会学とは?」という問いを持って対談するという面白い内容です。それぞれの学者の専門や研究方法によって答えに違うという、「社会学の分からなさ」が引き出されています。
 余談ですが、日本の社会学の中では彼のようなテレビに出てばかりで論文を発表しない社会学者を「コメンテーター社会学者」と揶揄する勢力と、社会学の啓発に役立っているとする声とがあり、定期的に学会誌等で批判がされることがあります。

4. 富永健一『社会学講義』

 上記の3冊を読んだ上で読むと非常に面白い本ですが、若干のクセがあるので先に上を読むことをお勧めします。というのも、この本は客観性よりも著者である富永健一先生の研究の文脈による解釈によって社会学とは何かが語られています。富永社会学のエッセンスが詰まっていると言っても良いかもしれません。
 副題にもあるように、「人と社会の学」として社会学を独自の視点で再解釈し、講義の形式で書かれています。社会学者それぞれに批判対象とする理論や概念などがあり、それが自身の社会学の立場を作り、理論や実証研究が展開されることを知ることができる一冊です。

5. マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

 社会学をかじったことがある方なら絶対に聞いたことのある、社会学の古典中の古典です。ここで挙げるまでもなかったかもしれません。が、社会学徒でも読まない人は読まないのでぜひこの機会に読んで見て下さい。簡単に言えば、プロテスタンティズムの禁欲性が資本主義と相性が良かったが故に近代資本主義は成立したと主張する本です。他にも大事なことが色々でてきますが割愛します。
 未だに日本の社会学の論文ではヴェーバーが引用されるくらい大きな影響力を持つ社会学者の代表作です。他にも岩波文庫からはこれよりも薄い本で幾つかヴェーバーの本が出ていますが、薄さと読みやすさは比例しません。ぜひこれに挑戦してください。